西村 直高 代表(金魚専門店カハラ)のインタビュー

金魚専門店カハラ 西村 直高 代表

金魚専門店カハラ 西村 直高 代表 NAOTAKA NISHIMURA

物心ついた頃から生き物、特に観賞魚に興味を持つ。会社勤務を経て、2007年に『金魚専門店かはら』をオープン。

金魚に魅せられた子供の頃から夢を忘れず

 とにかく生き物が大好きな子供でした。色々と小動物も飼ったりしたのですけども、特に好きだったのが熱帯魚、中でも金魚でした。最初は見て「わー、いいな」というくらいだったのが、徐々にはまっていったのが中学生の頃だったでしょうか。当時、足繁く通っていた近所の熱帯魚屋さんの店主さんが色々と教えてくれ、どんどんその世界に惹きこまれていったのです。その時点で「観賞魚に関係するお店が出来たらな」という淡い夢のようなものは持っていましたが、それを商売に、という発想もなかったですし、夢は夢として、大学を卒業後はサラリーマンとなり、営業を担当していました。転機となったのは、私が35歳の時。たまたま金魚を生業としている方とお話しする機会に恵まれたのです。その頃には、世の中の仕組みのようなものをなんとなく理解できていましたし、改めて金魚の世界の話を聞いているうちに、「一度きりの人生、思い切って好きなことをやってみよう」と思ったのです。

 『金魚専門店かはら』をオープンしたのが2007年のこと。それから7年、8年経って今の場所にめぐり会いました。ここは以前は飲食店だったのですが、床一面に貼ってあった絨毯を剥がしてみると、打ちっ放しのコンクリートが出てきまして。これ幸いといいますか、コンクリートの素材感を活かし、今の形ができたのです。

SNSの普及により、ささやかな趣味から広がる世界に

 当初は雑誌やホームページでお店を知った、もともと金魚が大好きな人が通ってきてくれていました。それが5年、6年は続いたでしょうか、流れが一変したのがSNSでした。きっかけは、私の娘がInstagramをしているのを見たことでした。写真や動画がメインのSNSで、「これは金魚にぴったり」と感じたのです。お客様からしても、“動く”ほうが見やすいですからね。今でこそいろんなお店で扱われるようになっていましたが、当時は本当に私が先駆けのような感じだったと思います。Instagramを契機に、そこからさらにYouTubeを見て来店される方も徐々に増えていきました。YouTubeについては、お客様が載せてくださるわけです。私が自分で発信するよりも驚きや喜びが素直に現れ、それが共感を呼ぶのではないでしょうか。それまで金魚は、正直なところ、「暗い」というイメージがあったかと思います。どちらかといえば、ひっそりとした自分だけの楽しみ、というところでした。それがSNSによってむしろ「知ってもらいたい」という形に変わり、どんどんとコミュニティがつながっていきました。今では「金魚をやってみたいんです」という初めての方が非常に多く見えるようになっています。

唯一無二の存在。そこに価値が生まれ、愛情が生まれる

 金魚は、一匹一匹違います。これが熱帯魚であれば、例えばグッピーはほとんど区別がつかないくらい一緒なわけです。その点、金魚は同じランチュウという種類であっても、顔も形も微妙に違います。よく「唯一無二」と例えられますが、その通りだと私も思います。そもそも金魚は、人間が作り出したものです。二千年ほど前、中国で野生のフナから赤いフナが偶発的に生まれ、そこから改良、改良を重ねて今日にいたっています。日本に入ってきたのは江戸時代、今から500年ほど前のことです。金魚の何が難しいかといいますと、三千個以上の卵を産んでも、そこから形の良いものに育ってくれるのはほんの数パーセントなのです。リュウキンならリュウキンの特徴を出したいと思っても、それが出ている子は本当に少ないんですね。逆に言えば、そこに価値が生まれるわけです。「この子なら気に入ってもらえるかも」。お客様にそう感じていただけるような金魚を仕入れてくるのは、自分で言うのは恥ずかしいのですが、そこはセンスであり、目利きと言えるでしょう。一匹一匹にこだわり、お客様が「良い」と感じてもらえるような選び方にも当店はこだわっています。

飼うのが難しいゆえに、魅せられる人も多い

 金魚は、あらゆる観賞魚の中で最も飼うのが難しいと言われています。実際、今日元気でも、明日には病気にかかってどうなるかわかりません。私も今だに毎日ドキドキしていますし、だからこそ飼ってる人は「今日も元気でありがとう」という気持ちになるわけです。その難しさも金魚の魅力の1つでしょう。もちろん専門店として、お客様から相談には、丁寧にお答えさせていただいています。それでその子が病気から回復すると、お客様も嬉しいし、私も嬉しい。難しさゆえに、愛情もまた湧くんでしょうね。

地域のみなさんへメッセージ

 金魚の世界では、今だに新しい種類が世に出てきています。私などがみても、「まだこんなに変わるの」と驚くくらいです。終わりがない、ということも金魚の魅力になっているのでしょうね。さて、実際、金魚を間近で見た方は少ないのではないでしょうか。水族館に行っても金魚はいませんし、かろうじて目にする機会は、おそらく金魚すくいくらいかもしれません。飼う飼わないはまずは置いておいて、少しでも興味がおありでしたら、まずは水族館がわりにどうぞお気軽にお店をのぞいてみてください。日本人が長く魅せられたきた理由の一端を感じていただけると思います。

 

※上記記事は2023年11月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。

金魚専門店カハラ 西村 直高 代表

金魚専門店カハラ西村 直高 代表 NAOTAKA NISHIMURA

金魚専門店カハラ 西村 直高 代表 NAOTAKA NISHIMURA

  • 出身地: 東京都中野区
  • 趣味・特技: テニス、ゴルフ
  • 好きな映画: トム・クルーズ主演映画、ジュラシックパーク
  • 好きな音楽: 最新曲からオールディーズまで洋楽全般
  • 好きな場所: 海や山、川。自然が豊かに感じられるところ

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