酒井 貴史 院長（こころ港南はりきゅう治療院)のインタビュー

自分の持っている技術で何かをしてあげたい

　はり・きゅう・マッサージの道に進むため、まず専門学校に3年間通い、国家資格である鍼師・灸師・あんまマッサージ師の資格を取得しました。専門学校を卒業してからは、横浜の治療院で1年半働きながら修行をさせていただきました。当院で働き始めたのは今から10年前、今の家を借りた不動産「ミック」が訪問はり・きゅう・マッサージを始めたというチラシが届いたのがきっかけでした。不動産屋なのに訪問マッサージをしているのが面白いなと思い、また家からも近かったので、応募の連絡をして今に至ります。当時は本社の一角から始まったのですが、そこから規模が大きくなり、現在の洋光台に移りました。はりきゅう・マッサージの世界に入ったのは、自分の持っている技術で何かをしてあげたいという想いからです。手に職をつけ、自分の力を生かして働こうと思った背景には、看護師の母が、年齢に関わらず、技術を使ってバリバリ働いていたことがあります。また、背が高いこともあって20歳くらいの時に猛烈に腰が痛くなった経験があります。今振り返ると、腰痛で整骨院に通院し、治療によって痛みが治ったこともきっかけの1つだったと思います。

母体が不動産だからこそできる日常のサポート

　当院の特徴は大きく2つあります。1つは、訪問ではり・きゅう・マッサージを行っていること。現在は、全体の9割が訪問での治療です。主な治療の対象は、長時間の歩行が不自由な方など、外に出るのが難しい方で、健康保険での訪問治療には「訪問を許可します」という医師の同意書が必要です。もう1つは、治療だけでなく、おうちの身の回りのサポートもできることです。母体が不動産の会社なので、家の売買をしたり、家の段差をなくしたりするお手伝いができます。治療を通じて築き上げた関係値から生活のバックアップもできるというのは、他の治療院にはない強みだと思います。実際に家を売りに出そうと考えている方のお手伝いをしたこともありますし、歩く姿勢や動き方を踏まえて家の動線を確認してほしい、伸びきってしまった草を処理してほしいという生活面のニーズにも応えてきました。

会話の時間自体も楽しんでもらいたい

　治療なので体が楽になることを前提とはしているのですが、その時間自体を楽しんでもらいたいと思っています。治療と一言で言っても、疲労がたまっているからこの部分をやってほしいという方からほぼ寝たきりの方まで、さまざまな症状の方がいらっしゃるため、治療の目的は歩きやすくなること、歩くことは難しくとも筋肉をほぐして少し柔らかくすることなど、人によって異なります。ただ、どんな方でも30分の治療時間のコミュニケーションを通じて、体以外もいろいろな形で楽になっていただけるよう心がけています。訪問治療の患者様の多くはなかなか外に出ることができないため、治療だけでなく、会話自体を楽しみにしてくださる方もたくさんいらっしゃいます。お話を聞くことで、「話すことですっきりして楽になる」「お話したいから来てほしい」「来てもらっただけで元気になる」とおっしゃってくれる方もいますね。

チームで安心できる治療を

　１人の患者様に対して、ケアマネージャーさん、医師、僕ら、ご家族といろいろな人が連携しながら治療を行います。鍼師・灸師・あんまマッサージ師は単体で訪問の保険治療ができるのではなく、医師が同意書を書いた患者様をケアマネージャーさんから紹介いただくことで、はじめて患者様のもとを訪問できるのです。僕ら施術者も誰でも良いわけではなく、鍼師・灸師・あんまマッサージ師の国家資格を持っていなくてはなりません。治療する中でも、患者様を紹介してくれたケアマネージャーさんと定期的に情報交換をしたり、ご家族とお会いした際にお話ししたりと、連携して治療を行うことを大切にしています。ご同居されていないご家族やすれ違いで会えないご家族の方には、ご希望があればノートに「今日はこんな治療をしました」と記録を残したり、お電話でやり取りしたりして、納得いただけるようにお話させていただいています。

地域の方へのメッセージ「まずは気軽に相談だけでも」

　地域を回ってみると1人暮らしの高齢の方がたくさんいらっしゃるものの、それに対して紹介いただける件数はまだ多くはありません。洋光台では本来、もっとたくさんの方がサービスを求めているのだろうと思います。この記事をきっかけに、訪問はり・きゅう、訪問マッサージの存在を知っていただけたのであれば、ぜひ気軽に利用いただけたら、何かしらのお手伝いができるんじゃないかな、と。最初は訪問のはり・きゅう・マッサージについて分からないことが多く敷居が高いと思うので、気軽に相談だけでもしていただけたら、こちらからもできることのご提案をいたします。

※上記記事は2024年4月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。