本郷台整形外科クリニック 田中 堅一郎 院長 KENICHIRO TANAKA
日本大学医学部卒業。横須賀市立うわまち病院で臨床研修医を務めたのち、横浜市立大学付属市民総合医療センター整形外科に在籍。2017年7月3日に『本郷台整形外科クリニック』を開院(江ノ電バス「飯島上町バス停」より徒歩1〜5分)
日本大学医学部卒業。横須賀市立うわまち病院で臨床研修医を務めたのち、横浜市立大学付属市民総合医療センター整形外科に在籍。2017年7月3日に『本郷台整形外科クリニック』を開院(江ノ電バス「飯島上町バス停」より徒歩1〜5分)
父が医師でした。私が小学校の頃には開業医をしていましたので、患者さんを相手に診療している姿を間近で見ていたのです。自分にとって一番身近な仕事だったということがもっとも大きなきっかけになったのではないかと思います。一般に、医学部を卒業すると2年間の研修の後に専門科を決めることになりますが、私が研修先に選んだのは横須賀市立うわまち病院というところでした。そちらは、まず医師として様々な経験を積み、専門は追々決めていけばいいという雰囲気だったのです。当初、私としては急性期の医療を望んでいましたので、初期研修後は救急総合診療部に籍を置き、その後、内科を経て整形外科にたどり着いたという経緯があります。最終的には、大人から子供までを幅広く診れて、なおかつ手技がある整形外科に魅力を見出したのです。『本郷台整形外科クリニック』は2017年7月に開院を迎えました。開業することになったきっかけは、知り合いから「面白い整形外科の先生がいるよ」と紹介を受けたことでした。その先生はイチ開業医でありながら、その枠にとどまらず、様々な活動をしておられました。限られた分野を極めるのも1つの道でしょう。しかし、その先生にお会いしたことで、より広い視野で、開業医だからこそ貢献できる道もあると考えるようになったのです。
治療については、様々な案を提示し、患者さんご自身に選んでいただくスタイルです。例えば、膝が痛い方が来院されたとしましょう。対症療法としての痛み止めや湿布。それからリハビリテーション。さらにお注射もありますし、最終的には手術という選択肢もあります。こちらから「あなたにはこれです」と決めつけるのではなく、整理してお伝えし、選んでいただくのです。もちろん選択する上でのお手伝いもします。これは私のわがままなのかもしれませんが、何よりご自分の身体のことです。患者さんご自身が「やりたい」と思った選択肢に対し、私たちはとことん付き添っていきたいと考えています。
栄区は高齢化率の高い地域でもありますし、様々な疾患がある中で、特に骨粗しょう症の治療には力を入れています。まだお若い方であれば、思う存分自分のやりたいことを叶えられる身体を維持していただきたいですし、ご高齢の方の転倒や骨折のリスクを軽減するためにも骨粗しょう症の治療は重要です。命には限りがあります。それを踏まえた上で、最後の最後まで自分で動ける身体を維持してもらいたいのです。大腿部頸部骨折というものがあります。この骨折を負うと寝たきりになるのを防ぐため、手術が第一の選択肢となります。ただ、私自身はその感覚になれるのに時間がかかりました。どこかで、「もうお歳だし、無理をする必要はないんじゃないか」という気持ちがあったのだと思います。整形外科医としてかけだしの頃、高齢の女性で、頸部を骨折した認知症の方の治療を担当する機会がありました。その方は循環器の持病もお持ちで、手術にはリスクが伴うことがわかっていました。ですから、ご家族に説明する際は、内心、「しなくてもいいのでは」という気持ちで臨んだわけです。ところがです。その患者さんの娘さんは「母も女ですから、自分でトイレにも行けないようになるなら生きている意味がないからやってください」とおっしゃったのです。もうびっくりしましたね。同時に、自分が甘かったことに気づきました。手術は無事終わったのですが、その時を境に私の中の感覚が変わった気がしています。歩けるようになったらなったで、骨折のリスクはあります。シチュエーションも様々ですから、正解というものはないのかもしれません。でも、自分のことを自分でできることは、人間の尊厳の分岐点ではないでしょうか。私はそれを応援してあげたいだけなのです。
病院のお医者さんの役割はいたってシンプルで、持ってる専門性を発揮し、手術であったり治療を提供するというものです。患者さんも、それを期待されているわけですよね。しかし、町医者はそれだけとは限りません。ここには、もちろん治したい方もいらっしゃれば、話を聞いてもらいたい、という方も来られます。患者さんは不安を抱えて過ごされているわけですので、その不安を解消する助けとなるべく、まずはお話を受け止めることが大切です。不安を丹念に拾っていくこと。それも私たち町医者の仕事だと思うのです。
困った時にはまずはご相談にいらしてみてください。どの科にかかっていいか、わからない場合なども、お話を聞いた上でしかるべきところに丁寧にご案内します。整形外科的疾患はもちろんのこと、お身体のことで何か不安なことがありましたら、どうぞお気軽にご相談を。
※上記記事は2023年10月に取材したものです。
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