杉山 紀子 院長（杉山歯科医院)のインタビュー

自然に歩み出した歯科医師としての道

　昭和37年、父が栄区で『杉山歯科』を開業しました。自宅のドア一枚隔てた場所が診療室だったため、学校から帰宅すると「ただいま」と顔を出す日々を過ごしていました。その環境から歯科医師になることは私にとって自然な流れでした。東京歯科大学を卒業し、大学院に進学後、父が急逝しました。当時、母からは「大学院でやるべきことを成し遂げ、卒業してから進路を選択してみてはどうか」との助言を受けましたが、私はこの医院を続けていく気持ちが先行していたため、そのまま医院を継ぐこととなりました。当時は不安も多く、学生時代に臨床実習で様々なことを経験しましたが、実際に指導医の方がいない状態で患者さんを診ることにドキドキしていました。そんな中、昔から懇意にしてくださる多くの患者さんが残ってくださり、日々来院していただけたことに大変感謝しております。また、診療で手がいっぱいだった中、当時の患者さんに応対してくれた母にも感謝しております。

患者さんの状況に合わせた診療方針

　患者さんが歯科医院に来院する理由は口腔内での痛みや腫れを感じ、その症状が改善を求めていらっしゃるからです。私は患者さんの希望を傾聴しつつ、歯科医師として判断するように心掛けています。患者さんごとに年齢や健康状態が異なるため、希望と状況を見極めて治療方針を決定します。明らかに抜歯や他の治療が必要な場合は、咬合機能を保つために患者さんに理由を説明し、診療にあたります。しかし、現状を維持する治療方針でも問題がなさそうであれば、経過観察します。この判断は患者さんの希望や口腔内の状態を総合的に考慮しています。　この地域は高齢の方が多く居住されているため、抜歯や口腔状況を変えることは多くの負荷がかかります。そのため、患者さんに寄り添いながら、可能な限り負担を軽減するように心がけています。地域特有のニーズや健康状態に配慮し、最良の治療を提供できるよう努めています。

オーラルフレイル予防

　お口の健康に対する日々の予防について考える方は多いと思います。その中で、私が特に気をつけて欲しいことは、特別なことではなく、口を積極的に動かすことです。健康には適度に体を動かすことが良いと言われるように、お口の健康にもお口を適度に動かすことが重要です。おしゃべりや歌を歌うなど、声を出す活動を積極的に取り入れてください。そして、その際には小さな声ではなく、しっかりとした声量で話すことが大切です。これによって口の筋肉を活性化し、血行を促進させることが期待できます。また、生活習慣にも目を向けましょう。規則正しい食生活や歯磨きの習慣が、お口の健康を維持するために不可欠です。バランスの取れた食事や適切な歯磨きが、虫歯や歯周病の予防につながります。お友達との交流も大切な要素です。社交的な活動は、自然なおしゃべりの機会を増やし、心身の健康をサポートします。当院では待合室で患者さんたちが楽しそうにおしゃべりをされています。同じ曜日･時間帯に来院される方が多いため、自然な形でお友達になられることもあります。このようにコミュニティを広げ、日々を楽しく暮らしていくことが、お口の健康をサポートする重要な要素だと考えています。

健康状態を以前から知っている者が支援する体制を

　訪問診療に関して、当院では数こそ多くはありませんが、積極的に対応しています。患者さんが来院することが難しい状況になられた場合、今までのかかりつけ医に見てもらいたいという希望が多く寄せられます。そのような患者さんには、できる限り往診ならびに訪問診療に出向いています。医師だけでなく薬剤師さんなども同様ですが、広い意味での健康状況を知っている者が支援することが大事だと私は考えています。また、横浜市では多くの区に在宅歯科医療相談室もしくは連携室というサポートが提供されています。このサポートを活用すると、訪問の手配などのサポートを受けられます。例えば、かかりつけ医がいない患者さんや引っ越されてきた患者さんには、近隣に相談できる歯科医師が見当たらないことがあります。その際、このサポートを使用することで、ご自宅の近隣にある訪問診療が可能な歯科医師をコーディネートしてくれます。自宅から近くの医院であれば通院できる状況になった時にも利便性が高いですね。私は皆さまがこのサポートを利用し、最適な訪問診療を受けていただけるようになることを願っています。私がマッチした場合にも対応できるように準備しています。

口腔衛生管理を丁寧に

　お口の健康が全体の健康に与える影響がますますクローズアップされ、テレビなどでもその重要性が周知されるようになってきました。このことを踏まえ、自身の健康維持において口腔衛生管理を見直すことは非常に重要です。口腔内の状態が健康に及ぼす影響は大きく、虫歯や歯周病などが全身の健康に悪影響を及ぼす危険性があります。そこで、今一度口腔衛生管理を見直すことで、全身の健康を維持する一助になると考えています。一般的ではありますが、痛くなってからではなく、痛くなる前にご相談いただくことが重要です。口腔内に不安を感じる前にご来院いただけますと、より早い段階で適切な対処が可能であり、健康的な衛生環境を整える助言ができます。

　当院では患者さんの個々の状態に合わせたアドバイスや治療プランを提供しております。まずはお気軽にご来院いただき、口腔の健康状態を確認しましょう。早期のケアが将来の健康を支える一環となりますので、ぜひご相談ください。

※上記記事は2024年2月に取材したものです。
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